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自動車ハンドル周辺部品 〜操作性に配慮したマット調のハードコート〜

製品概要

自動車のハンドルに搭載されているステアリングスイッチはユーザが運転中でも視線を正面から逸らさずにハンドルを握りながらナビやオーディオなどの操作をするための部品です。自動車のステアリングスイッチはプッシュ操作だけではなく、スマートフォンのように指で触れたまま左右にスライドさせて操作を行うスワイプ機能が搭載されているものもあります。
ステアリングスイッチは自動車の内装部品の中でも操作頻度が非常に高い部品であるため、プッシュやスワイプなどの操作でコーティングが剥がれたり、センサーが誤作動を起こさないような耐久性能を持った材料の選定や加工管理が要求されます。

使用箇所自動車のハンドル周辺部品
仕様成形、印刷、UV塗装、特殊マスキング
生産場所美里工場、中国工場

特徴

  1. 耐久性能を発揮するためのUVハードコーティング時の膜厚管理
  2. 操作時の触感を重視したマット感あるUVハードコーティング
  3. スワイプ操作時にセンサーが誤作動を起こさないような材料選定
  4. 同仕様の製品を日本・中国の両工場で生産

1.耐久性能を発揮するためのUVハードコーティング時の膜厚管理

スイッチの表面部分は傷が付きづらいようにハードコート塗装を施しています。ハードコート塗装にはUV塗料が使用されることがあります。UV塗料は表面硬度が高く、紫外線を照射することで硬化する特性を持っています。
塗料の性能を十分に発揮するためには、塗料メーカーが推奨する塗料の仕様書に沿った条件で塗装加工を行う必要があります。仕様書には膜厚や乾燥温度、時間、紫外線の光量・照射時間が記載されています。仕様書の要件を満たしつつ、月200,000pcsの部品を生産し続けるためには人や設備においてさまざまな管理が必要となります。
ここでは膜厚の管理について紹介します。塗装の膜厚は厚すぎる場合、薄すぎる場合で外観や機能面で以下のような現象が発生します。

外観面機能面
塗膜が厚い塗料の表面張力により、製品の縁部分に塗料が溜まってしまう塗料に含まれる溶剤が塗膜が厚いために揮発しきれず、
硬化後に白化などの外観不具合を
引き起こす
塗膜が薄い製品が柚子の表面のように凹凸ができてしまう塗膜が薄すぎるために操作時の摩耗に
弱くなってしまい剥がれやすくなってしまう

上記のような不具合を発生させないためには、塗装室の内部を一定の温度・湿度で保ちつつ、スプレーガンの位置、角度、ラインスピードの塗装設備の設定を固定し、生産時に必ず確認を行うことが重要となります。塗装加工中も定期的にテストピースに塗料を塗布し、膜厚測定器で現物の塗装膜厚を測定し、塗料メーカーの推奨範囲内であることを確認しながら量産加工を行う必要があります。

2.操作時の触感を重視したマット感あるUVハードコーティング

部品によっては、表面のツヤ、光沢を落としたいという要望があります。その際は塗料にツヤ消し材と呼ばれる粉末材料を配合することで、ツヤを落としたマット感がある塗装品を作ることができます。ツヤ消し材を多く配合すればするほどマット感が増し、表面を指で触った際にサラサラとした触感になります。特に最近のステアリングスイッチはスワイプ機能を持った製品もあるため、操作時の指通りの良さを求められることがあります。
ツヤ消し塗装はマット感のコントロールが難しく、ツヤ消し材の混ざり具合や塗装膜厚によって仕上がりにバラつきが生じます。コントロールを誤ってマット感が出過ぎると文字やシンボルがボヤけて視認しづらくなったり、逆にツヤ感が出過ぎると指通りが悪くなりスワイプ操作時に引っかかったような触感が出てしまいます。
そのため、ツヤ消し材が配合された塗料は、しっかりと撹拌(かくはん)して均一に混ぜ合わせつつ、1.で述べたようにしっかりと塗装膜厚管理する必要があります。他にも配慮しなければいけないことが多いため、ツヤ消し材を使った塗装は経験値が非常に大きなノウハウとなります。

3.スワイプ操作時にセンサーが誤作動を起こさないような材料選定

スワイプ操作で動作するスイッチ部品の裏側には静電センサーが搭載されていることがあります。静電センサーは人の指などを近づけた際のセンサーの電界の変化量を検出してスイッチが発動する仕組みとなっています。印刷仕様の部品の場合は、センサーが誤作動を起こさないような電気抵抗値を持つインキの選定が重要となります。お客様、材料メーカー、加工メーカーが密に連携をとりながら材料選定を行い、加工のバラつきも視野に入れた上でお客様の要求を満たすように立ち上げを進めていくことが重要になります。

4.同仕様の製品を日本・中国の両工場で生産

この部品はお客様が様々な国で生産をされている部品であるため、輸送費を下げるためお客様のご要望を満たすため、日本と中国の両工場で同じ仕様の部品を加工しています。もちろん日本、中国で要求される品質レベルは変わらないため、中国工場でも高品質でものづくりができるように日本側からもサポートを行い、日本、中国ともに高い歩留で加工をものづくりを実現しています。


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