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自動車ハンドル周辺部品 〜怪我のリスクを低減したメッキ調部品〜

製品概要

自動車のハンドルに搭載されているステアリングスイッチは車の部品の中でもユーザが操作する頻度が非常に高い部品です。操作ボタンには金属調のデザインの部品もありますが、加工方法としてはメッキが使用されていることがあります。
メッキは素材に銅・ニッケル・クロムなどの金属膜を被覆する工法です。金属を厚く被覆するため、プラスチック部品にメッキ加工を施すことで本物の金属の質感を持った部品を作ることができます。また、2色成形部品と組み合わせることで、文字やシンボルなども表現することができます。しかし、金属膜が厚く硬いため、剥がれたり、めくれたりした場合はユーザがボタンをプッシュした際に指を怪我してしまう危険性があります。
ユーザが怪我をする危険性をなくすため、最近では金属調のデザインを持つボタン部品を作る際に真空蒸着が採用されることが増えてきています。真空蒸着の場合、メッキと比べて金属膜が非常に薄い上、金属を気化させて表面を成膜しているので基本、剥がれませんが、万が一剥がれても指に刺さったり剥がれても指に刺さったり、怪我をする心配は一切ありません。文字やシンボルについてはレーザー加工で表現でき、色味についても金属膜を保護するミドルコートやトップコートに着色を行うことで様々な表現が可能なことが大きな特長です。

使用箇所自動車のハンドル周辺部品
仕様成形、2色成形、アルミ蒸着、レーザーマーキング、UV塗装、特殊マスキング
生産場所タイ工場

特徴

  1. メッキ表現に近づけるための真空蒸着加工のツヤ/色味の調整方法
  2. レーザー加工による文字・シンボルの表現
  3. 別部品との勘合/摺動(しゅうどう)に関する部分のマスキング

1.メッキ表現に近づけるための真空蒸着加工のツヤ/色味の調整方法

お客様から色のリクエストを頂く際には色見本をお預かりすることが多々あります。金属調部品の場合、色見本がメッキ加工品であることが多く、それを真空蒸着で再現して欲しいというご要望を頂くことがあります。メッキと真空蒸着では金属の膜厚も異なる上、メッキは構成している層が金属ですが、蒸着の場合は層の割合として金属層は非常に薄く、塗装の層が主となります。そのため、メッキの見本を蒸着で表現し、お客様のご要望に応えるためには非常に複雑なノウハウが必要となります。
真空蒸着はアンダーコート層、金属層、ミドルコート層、トップコート層の構成で加工をされることが一般的です(仕様によってはミドルコートを使用しない場合もあります)。メッキの見本のツヤが高い場合はミドルコートやトップコート層に微量の顔料を配合して合わせることが多いです。見本のツヤが低い場合、まずは見本を眺める角度によっても色が変わって見えることが多いため、正面で見た場合、斜めから見た場合、どちらを正として合わせ込むべきかを取り決めます。その後、メッキ見本のツヤを目視でみたり、手で触れてみたりと注意深く観察します。メッキのツヤ表現にもいくつか種類があり、金属の反射を抑えながらも再表面は光沢があるメッキと金属の反射と最表面の光沢を両方とも抑えているメッキがあります。これらを蒸着工程で表現するためには、塗料にツヤ消し材を配合することが重要となります。その際にツヤ消し材をアンダーコートに配合するか、ミドルコートもしくはトップコートに配合するか、両方に配合するか、といった調整によってツヤの合わせていきます。ツヤの調整に加えてミドルコートもしくはトップコートに着色するための顔料を塗料に配合し、色味を微調整することでメッキの見本を再現します。

2.レーザー加工による文字・シンボルの表現

ボタン部品には、何の操作を行うボタンであるか、ということをユーザが直感的に理解して操作できるように文字やシンボルが印字されています。メッキ加工の場合はメッキを被覆できる樹脂材料と被覆できない樹脂材料が存在するため、その特性を利用して文字やシンボルを表現します。具体的には2色成形で文字やシンボル部分はメッキが被覆できない樹脂材料を使って成形し、メッキ加工を行うことで実現が可能です。しかし、この工法には1つ問題点があり、「O」や「P」のようにメッキが被覆できない樹脂で囲まれた閉塞的なエリアがある部品の中にはメッキを被覆することができません。そのため、文字の形を一部崩し、閉塞的なエリアを無くしてメッキ加工を行う必要があるため、文字やシンボルのデザインに制約ができてしまいます。

2色成形メッキでの文字表現

一方、蒸着加工であれば、レーザー加工で蒸着層の金属を剥離させることができるため、メッキでは表現が困難な「O」や「P」などの閉塞的なエリアを持つ文字やシンボルでも制約なく表現することができることが特長です。

3.別部品との勘合/摺動(しゅうどう)に関する部分のマスキング

ボタン部品はユーザが操作する際に部品自体が動きます。動く際には決められたストローク量で正しく動作するためにも、相手部品と正しい寸法で組み立てられていること、部品同士が擦れる摺動(しゅうどう)箇所が想定通り動作することが非常に重要となります。ここで組み立てに関係する勘合部分に塗装が入り込んでいる場合、塗装の膜厚で寸法がバラつくため、組み込んだ際に隙間が多くてガタつきが発生したり、キツくて組み込みができなかったり、といった不具合が発生する可能性があります。また、摺動箇所についても塗膜が乗っていることで相手部品との隙間量が変わってしまったり、塗膜の滑り性によって押し感がバラついてしまうなどの問題が生じる懸念があります。そのため、勘合や摺動に関する部分については塗装時にマスキングを行い、成形部品で寸法をキープするようなものづくりが必要となります。そのため、仕様を確認する際にはこれらのポイントに配慮した上で加工方法の検討を行うことが重要となります。

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